ベストを目指して周りと違う選択をしてもいいじゃないか
この夏、イチロー(敬称略)がMLBで日本人初の殿堂入りを果たした。ユーモアを交えた十分に準備されたスピーチが、いかにもイチローらしかった。
現役時代、殿堂入りに相応しい数々の記録を残したのは言うまでもない。それよりも、他の選手が真似できないバッティングや彼独自のトレーニングなど、自分のスタイルを貫いていたのがカッコ良かった。単純な体力や筋力は他のメジャーリーガーが上回っていたけど、頭脳や技術を最大限に駆使して戦い続けていたのが記憶に残っている。
MLBのキャリアをシアトル・マリナーズでスタートさせたイチロー。途中、ニューヨークやマイアミでもプレイしたが、最終的にシアトルに戻って現役を引退。まさか球場に銅像が立つまでの存在になるとは思わなかった。
この夏もう一人、なかなかユニークなテニスで世界と戦う日本人選手が気になっていた。カナダで開かれたナショナルバンク・オープンで、伊藤あおい選手は世界ランキング9位の相手を破った。彼女のランキングは、その時点でトップ100位にも届いていなかったので、かなりの番狂わせだったのではないか。
女子もパワーテニス全盛の中、伊藤選手はフォアハンドをゆっくりとしたスライスやロブで返すのである。ほぼ突っ立った状態で打つこともあって驚くのだが、どうやら彼女が生み出す緩急やリズムの変化が相手の調子を乱し、ミスを誘うようだ。勝負時にはネットに出たり強いストロークも繰り出され、その多彩なテニスが見ていてめちゃくちゃ面白い。
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手も投手としての復帰を果たし、この暑い夏は、クーラーの効いた部屋で世界を舞台に活躍するスポーツ選手に楽しませてもらっている。
その一方国内で、野球部員の暴力問題等をきっかけとして、高校野球の甲子園大会途中で出場辞退が発生したのは残念な出来事だった。
現在進んでいる調査で詳しい事実が明らかになり、再発防止に繋がることを願う一方、転校を余儀なくされたという高校生には、これからも野球やスポーツを楽しむ機会が得られるようにと祈るばかりだ。選手が理不尽な状況を我慢するのではなく、これからもベストを目指してスポーツする場やスタイルを選択できるような、そんな環境づくりに貢献していきたい。